冬至

海や山、毎日通る路、自宅の庭先でも普段から自然の変化に触れて生きていると旧暦のほうが自分にはしっくりくる。

昨日は二十四節気冬至だった。二十四節ッカー(旧暦を意識して生きる民)の我々からすると冬至には特別な思いがある。

簡単に言うと太陽の周りを自転しながら廻る軌道上で地軸の傾きから一年で最も太陽から離れる日が冬至で、その反対が夏至となる。

新暦の正月が明け、立春辺りからぐんぐんと一日の日照時間が長くなり、新緑が勢いよく芽吹き始める。立夏、今でいう五月の頃には一日に二、三分も日は長くなり、夏至の前後には十九時でもまだ明るいほどだ。

ということは、まだ夏本番を迎える前の六月二十一日を境にどんどん日が短くなっていくということだ。だから二十四節ッカーたちは皆、夏至の日の何とも形容しがたいエモーショナルな感情を抱いているのだ。

即ち、冬至とはその日を境に日が長くなり始める節目の日ということだ。なんと喜ばしいことでしょう。もちろん全ての季節にそれぞれの役目があり、一日一日が尊いものなのだけど。日の当たる時間が長くなるということはとにかく嬉しいことだ。

 

建築的にも日照を上手に取り込むことはとても重要だ。

冬至の太陽の軌道は一年で最も低く、入射角度は31度。うちの設計する住宅は必ず緩勾配の屋根で軒を深めに出しているが、冬の低く柔らかい陽光は軒をかいくぐって部屋の奥まで光を届ける。うちの家は南側の端から北側の端まで7.5間、約14ⅿ離れているが、この時期は北の部屋まで光が到達している。太陽の光は物質にあたって輻射熱を放出する。動物たちも陽だまりが暖かいのをよく知っている。

対して夏至の入射角は78度。真上から突き刺すような強い熱線は深い軒に遮られ、家の中には入ってこない。これが太陽の軌道、入射角を計算した先人の知恵による設計だ。

最近の建材の機能性、利便性の発展は目覚ましく、次々と新しい商品が開発されている。やれ「断熱性能20%向上(当社比)」とか「気密性30%向上によりエコ減税取得」なんて謳い文句をよく目にするが、そんなんものは洗濯洗剤などと一緒で、毎年毎年洗浄性能が上がったとコマーシャルしているけどじゃあ10年前のはなんだったんか?と突っ込みたくなる。洗濯物は10年前も今も「白さ」はさほど変わらないだろう。

高いお金を出して普通の倍の厚みのガラス窓を付けたって、断熱効果は倍にならないし、普通のとそんなに変わらない。太陽光が部屋に入れば輻射熱が放出されるから軒のない家の大きな窓なんてもう大変。大きな窓の素晴らしい景観も、結局簾でも掛けなければ暑くてやってらんないんだから。

高断熱高気密なんてのもどうなんでしょうね。いくら気密にしたってお天気のいい日は窓全開にしたいし、今日みたいにめちゃくちゃ寒い日だって一日に何度かは換気して家の中の空気を入れ替えたいと思うんだが。

建材の機能数値に頼った設計ではなく、新しい技術も取り入れながら自然の力を応用した住宅が望ましいと僕は思います。

これからも緩く深い屋根をつくりつづけます。現在誠意設計中の新築案件は来年上棟予定。年が明けたら久しぶりに新弟子が入ってきます。wccworks初の女性大工の誕生だ!