まだまだ続くよ、名古屋シリーズ 

移籍先の鉄筋工事会社は、その名も「キング工業」。50を目前に控えているのにも関わらず、ロン毛で金髪メッシュの社長、通称「オヤジ」を筆頭に、僕をスカウトした親方、14歳上で釣りに人生を捧げる「ヨシナリ君」。小柄で小太り、顔はバンビの「ヒグチ君」。当時すでに64歳のスーパー鉄筋おじいちゃん「小島さん」。まるで時代劇のような名前、柳 五八、通称はっつぁんと呼ばれる謎に満ちたおっさん。という非常に濃ゆいメンバーでした。
はっつぁんはほんとに謎が多くて影のある、決して多くを語らない男でした。酒癖が悪く、飲むと金をバラ撒き、いつも喧嘩をして青アザを作っていました。一度、ボソッと「俺は戸籍もなんにもねえ」と言った事がありました。冗談と思って聞き流していましたが、ある日集合時間を過ぎてもはっつぁんが来ないので心配になりヒグチ君と家(小屋)まで迎えに行くと、草の生えた畳の上で寝ていて、僕は相当ショックを受けたのをよく覚えています。
みんなえらく僕を可愛がってくれて、公私共に面倒を見てくれました。友達のいない事を気遣ってくれて、仕事が終わるとみんなで飲みに出たり、休みの日はよく琵琶湖までバス釣りにでかけました。本当に過酷な労働でしたが、その分結果が伴うし、仕事もどんどん覚えて、資格も幾つかとって、しばらくは充実した日々が続きました。