名古屋シリーズ vol8

鉄筋屋の仕事はとにかくパワーと段取りが勝負。自分たちが請けている仕事では、応援の職人をいかに使いこなすかというのが、会社の利益に直通します。材料を荷揚げする順番1つでさえ、誤ると大きな損益となります。会社のメンバーが少なかっただけに早いうちから仕事を任せられ、プレッシャーを与えられた事が今の仕事にもかなり活きていると思います。一度高層マンションの建設現場でタワークレーンの運転を任せられたことがあって、最初のうちはびびってかなり安全運転だったのですが、階数が上がっていくにつれ慣れてきたのか、運転場所から死角になっている部分で高速旋回してしまい、長尺物の重たい鉄筋が振り子のようになってマンションの敷地からはみ出して電信柱に絡まり、あえなく大惨事となるところでした。。。となりに銀行があり、もし電線が切れていたら…と考えるといまでもゾッとします。あんときはほんと血の気が引く音を聞きました(笑)親方や現場所長にはこっぴどく叱られましたが、その後も運転を任してもらい、マンションが完成した時の式典で「災害防止に於ける安全管理模範者」の表彰をされ、ぼくは余計に調子に乗るのでありました。
それともう1つ、僕の仕事のスタイルに多大なる影響を及ぼした「ただしくん」の話。ただしくんは別のチームの職人さんで、よく応援の行き来をしていました。年はちょうどひと回り上で、仕事は一流。正義感が強く、でも切れたら誰も止められない、どこかみんなに怖がられているような人でした。僕は釣りという共通の趣味で打ち溶け、よく可愛がってもらいました。名古屋の夜を教えてくれたのただしくんでした。荒々しくも人への気配りや、優しさにあふれた人で、「職人っちゃあこういうもんだ」というのを体で教えてくれた人です。僕は後にただしくんと一緒に働くことになります。続く…