名古屋シリーズ vol2

高校卒業を控えた僕は、クラスで唯一進路が決まっていませんでした。一応進学クラスだったので、先生たちはなんとしてでも進学して欲しかったらしく、受けるだけでもいいからといろんな学校の資料を持って来ました。僕は進学する気は皆無だったので、ならばせめて就職をといろんな会社の資料を持って来ました。僕は学校に進路を決められるのがとても嫌だったので、結局そのまま卒業してしまいました。いまでこそよく耳にするようになりましたが、いわゆるニートって奴です。そして1か月間、いろんな所に行き、いろんな人と話し、考えました。
「このまま山口に居ったらほんとに腐る」
「誰も知らんところで、自分一人の力だけで飯を食っていけるか?」
そんな事を考えているうちに5月には名古屋にいました。「自動車免許取らせます!」の文字に惹かれ、面接後すぐに内定した人生最初の会社はとてもダーティーな会社でした。社長は67、8くらいの小柄な男で趣味はカジキ釣り。しょっちゅうハワイの方まで行ってたみたいです。社員は僕を入れて6人、ほとんどが身内でした。社長の奥さんは若い中国人、ろくに日本語も話せない、いかにも怪しい感じがプンプンしてました。
僕は会社から車で10分程離れた「寮」と呼ばれる建物に案内されました。木造2階建てで1階は資材置き場、2階は4部屋あり外廊下の端に洗面台とトイレがありました。錆びた鉄骨階段をトントン昇り、「ここね。」と社長がドアを開けるとすぐにバタンッと閉めて、「やっぱこっちね。」と隣の部屋のドアを開けました。何でですか?と質問すると、「中で猫が死んでいる」とのことでした。ノンフィクションです(笑)今でこそ笑えますが。
あぁ、これがタコ部屋ってやつか…って思いました。それでも絶対に山口には帰らないと覚悟を決めたのをよく覚えています。続く…